「神秘家列伝 1〜4巻」水木しげる

神秘家列伝 其ノ四 (角川文庫ソフィア)
雑誌「怪」に連載されていた、有名な世の中の神秘家の生涯を、水木しげる御大が描いた作品。
宗教家とも学者ともいわず「神秘家」としているのが本当によい。


もともと水木御大の伝記は激しく“オモチロイ”。
きっちりした調査と、それでいて独自の解釈がグルグル混ざり、そこに御大の独特のトボケたタッチがあいまって本当に“オモチロイ”。
伝記ながらあいまに御大みずからヒョッコリ登場して語るシーンも多く、御大自身の持論もまたよい。


またこれは最近(2003年)の、おんとし81歳の作品であることがすばらしい。
ストーリー、画のクオリティといい、過去作とまったく遜色ないどころかむしろ過去作品より緻密かつ、こなれている(81歳でマンガ稼業50年の御大に“こなれる”というのもたいへん失礼な物言いだが)。
売れっ子マンガ家で「妖怪いそがし」に追われているころより、いまの方がゆったり作品が描けているのかもしれない。また解説などに書いてあるように、80歳を超えたいまの方が、不思議なものに対する視点がバッチリ定まっているのかもしれない。


それはともかく、作中で「まだ研究を進めねば」というような発言をされている水木しげる御大が、非常にたのもしい!


ちなみに私は井上円了を勉強しようと思った!
また神秘家ではない宮武外骨まで扱っているのが御大らしい。御大は奇人スキだもんなあー。