「真説金田一耕助」横溝正史

真説金田一耕助 (角川文庫 緑 304-63)
おおお面白い。横溝先生のエッセイ。膨大な金田一シリーズをほぼ呼んでいるというのに、なぜこれを読んでいなかったのだあー。
金田一シリーズが角川文庫化され映画化され、ブームになった頃(1976年あたり)のエッセイで、あれよあれよとブレイクしていく自分の作品群、または作者の主人公(特に金田一耕助)に対する思いというものを、淡々と語られていらっしゃる。ブームが熱くなるにつれ、取材だのテレビ出演だのでしんどいとか(当時先生は70代前半)、そういったことも嫌味になることなく、独特のユーモアと文体でもって書かれている。また文章のあいまに、横溝先生が師事していた江戸川乱歩の名前が普通に出てくるところがすごい。
和田誠の挿絵もすばらしい。きわめてシンプルながら、雰囲気良し、また似顔絵がかわいらしく似ていること。
ところで「金田一耕助役でハマリ役はいない」と主張する私。(くわしくはサイト「インタ部」の「犬神家の一族」で語っております)。横溝先生は、石坂浩二も最初は「二枚目すぎるなあ」と思っていたそうだけれど、ちょうど撮影現場で横溝先生といる時にボヤが出て、石坂浩二金田一の扮装のまま、ハカマのももだちを取って、火事場に向かって走り出した瞬間、「あ、金田一耕助だ」と思った、というエピソードはすごく好きだ(このエピソードは市川崑のDVD−BOXより)