「獣害史最大の惨劇 苫前羆事件」苫前町郷土資料館(木村盛武)

kkato_sp2008-10-15

先日旅行で苫前(とままえ)町に行った際、郷土資料館で購入しました。写真の通り、よく学校なんかで作る資料集といった、本とも言えない装丁なのですが、中身はすごいです。苫前羆(ひぐま)事件の当事者(事件後数十年たってしまってはいるのですが)から聞いた、ヒグマに襲われた時の状況が書かれています。
苫前羆事件は、1915年冬、ヒグマが8人を殺害したという事件です。くわしくはコチラ(ウィキペディア)
文体は柔らかささえ感じる口語風なのですが、それでも淡々と、これ以上ないくらい残酷な描写が続き、読んでいてちょっと気持ち悪くなってしまいました…。また残酷な描写だけでなく、人間(それも女)の肉の味をおぼえたヒグマが、執拗に女性の匂いを追っているという習性も読んでいて怖かったです。


実際に事件があった現場は、現在小屋や巨大なヒグマの像などで再現されているというので、向かってみました。国道から現場までは「ベアーロード」と名付けられており、畑に挟まれた生活道路で、家屋も点々としています。
道端には頻繁に、かわいいクマのイラストが描かれた案内看板が設置されています。看板はありがたいですし、地元の人が力を入れているのもわかるのですが、事件が事件だけに、観光地化してしまって良いのかどうかが悩みますね…。
そして現場の直前になって、今まで開けていて舗装されていた道が、うっそうとした木々に囲まれた砂利道に…ちょっと待って、これ怖いわ!急にクマが出そうな雰囲気になるなんて…!
ビビリながらも事件現場を見物しました。小屋の近くには巨大なヒグマの爪痕がたくさんつきまくった木はあるしで、絶対ここ、今でもヒグマ出るよなあ〜。
と思っていたら、実際に郷土資料館の人も「最近は少ないみたいですけどねー」って、やっぱり出るんじゃないですか!とはいえここに「熊出没注意」看板を出そうものなら、本当にシャレにならないですよね…。


ところでこの事件に関わる資料、看板、DVD、そしてこの本の表紙など、ぜんぶ墨痕くろぐろとした迫力ある筆致で、文章やヒグマの絵が描かれているんですよね(これがまた怖さを上昇させている)。おそらく1人、こういった資料を作成するのに力を入れてらっしゃる方の作品ではないかと…。
この方以外にも、事件現場に再現小屋を建てたり、いっぱい看板が立っていたり、資料館で手作りジオラマを作成したりと、ボランティアや老人会のみなさんで、この事件(というか観光)を強くプッシュしていくぞという気合いを感じました。