「長い道」こうの史代

長い道 (Action comics)

地味でぼんやりした妻と、甲斐性なしで浮気性の夫の、奇妙な生活を描いたマンガ。絵柄が非常にかわいらしいのでほんわかマンガと勘違いしてしまいそうだが、夫の方は本当に妻に愛情がないし、妻は妻で不条理な目に合わされても特に反応なしの超マイペース。貸してくれたカバオ君（仮名）は「笑えるよー」と言っていたが、スマン笑えない。たぶん奥さんの方が、実際には超地味で決して美人ではないという設定なのだろうけど、マンガだと非常にかわいらしく見えるので、「こんなかわいい女性なのに、なぜこんな不幸な目に…」と同情してしまうからだと思う。面白い、確かに面白いけど、ちょっと気分がへこむ。巻末に行くにしたがって、ふたりの気持ちがちょっとだけ寄るのが救いだろうか。
で、読んでから数日たって、フト思ったのだが、このマンガのダンナは太宰治作品の主人公だ。ああそうだまるっきり。開き直って家をあけて遊んでおきながら、心の隅っこでは妻や懐のことを気にして挙動不審。そう思ったら私の中ではスッキリした。
とにかく作者の独特のセンスと筆力は感じましたよ。他の作品も入ったら貸してください。＞カバオ君