「ナラタージュ」島本理生

ナラタージュ
珍しく恋愛小説です。古本浪漫堂の店長が「貸すから読め!」と貸してくれたのですが、気に入ったので購入しました。読み始めた時は筆者の淡々とした描写が気持ちよいと思っていたのに、数ヶ月ほど時間をあけてから読み始めたら、「めっさ青い!甘酸っぱい!」と感想が一転しました。その数ヶ月に何があったんだ、私。
物語は、大学1年生の女性が、夏休みに母校の高校の演劇部公演の手伝いに行き…というお話なのですが、コレはアレですね、「文系クラブ女子の“リアル”と“理想”が適度に混ざってる感じ」とでも申しましょうか。両親が仕事で外国に行っちゃったというかっこいい理由で1人暮らしをし、好意はあるけど手を出してこない影のある年上男性にホレていて、美人の女友達も気の置けない男友達もいるがズカズカ踏み込んではこず、趣味はコジャレだけど性格はマジメな男性に好意を寄せられる…。そこからいろいろ出来事が起こるのですが、いずれも青春時代にみんなが経験しているような事柄ばかりで、大なり小なり既視感を覚えつつ、でもちょっとキレイな世界と言いますか。ベタついていないサラッとした無菌無臭な世界なのに、雰囲気や読後には非常に満足感があります。


さて個人的に引っかかったところ…ネタバレなので白文字→主人公の思い人が嫁姑問題で妻と別居に至っておりますが、男性が「妻に母親との同居を言い出した」「モメる妻と母親の間をなんとかしようとした」という段階で、「あんたやっちゃったね!」としか言えません。一見、母にも妻にも平等な夫ですが、実際には血縁ではない分、夫は妻の味方をするスタンスで問題解決にあたった方が無難なんだそうです。本人も「ぼくが悪かったんだ。すべてぼくのせいだ」というようなことを言っていますが、まったくもってその通り。既婚女性の悩み相談を読んだりすると、ホントよく出てきますこのテの嫁姑話。それまで、私はその男性のことを「かっこいいな」と思いながら読んでいたのですが、この過去が明らかになった瞬間、すごい勢いで私の彼への気持ちは引いていきました。
がしかし、主人公の彼を思う気持ちは動きません。描写はないけど、むしろそんなツライ過去があって気の毒、くらいに思って、むしろ男性への同情の気持ちを強めたのかもしれません。これが主人公(19歳くらい)と筆者(当時22歳くらい)の“若さ”なのだろうと思い…また、自分が“年とったなぁー”と痛感した次第なのです。