「黄色い目の魚」佐藤多佳子

黄色い目の魚 (新潮文庫)
先日読んだ「サマータイム」同様、登場人物は同じだけど、章ごとに主人公が入れ替わるという小説群です。今回は主人公が2人いて、男の子視点と女の子視点で、交互に主人公が入れ替わります。
ネタバレになるので、以下、たたみます。
中学〜高校生独特の、家族や周りへの不満や不安をすんなりした文章で描いていて読みやすいです。思春期の頃って、家族よりも、個性的な変人に憧れる気持ちってありますよね。また舞台の海辺の坂の町、夜の住宅街…風景が思い浮かびます。
ただ、登場人物の性格がわりとあっさりしていてかっこよすぎというか村上春樹的なのが、思春期の心理を描いているのにちょっと浮世離れを感じてしまいます。特に主人公の一人、ごくごく普通でサッカーと絵に熱中する高2男子が、何の説明もなくすでに性体験済みで、なおかつ行きずり的にあっさり女の子と寝てしまうのがまさに村上春樹的で残念でした。せめて元彼女がいる描写とかがあれば、これまたスパイスになって良かったかとは思うのですが…。


あと余談ではありますが、表紙が、超ミニスカ茶髪の女子高生と、ちょっとルーズに制服を着た男子高生の絵だったので、イマドキっぽい高校生男女の話かな?と思って、実はちょっと読まずに置いていたのです。しかし読んでみたら、そんな人は出てきませんでした。主人公の女の子、ベリーショートだし。あの表紙、誰?