「トムは真夜中の庭で」フィリパ・ピアス 訳/高杉一郎

トムは真夜中の庭で (岩波少年文庫 (041))
児童向けの本です。20世紀前半のイギリス、弟がはしかにかかったせいで、都会の叔母さん宅(マンション)に休暇の間じゅういなければいけなくなったトムは、なぜか夜にだけ行ける不思議な庭園を発見し、そこで少女と出会う…という物語。
前半はなかなか動きが少なくて読み進まなかったのですが、後半はSFみたいで面白かったです。以下、ネタバレなのでたたみます。
トムが通う庭園は、どうやら現在ではなく、昔の時代らしい。庭園で仲良くなった少女ハティは、トムが会う度にどんどん大人になっていき、最後にトムの姿は薄くなってしまい、ハティからすっかり見えなくなる。
実はハティは、マンションに住む偏屈そうなおばあさんで、トムは彼女の少女時代にタイムスリップしていた…というオチなのですが、これは読んでいて何となくわかってしまいました。
ただ、寂しい少女だったハティの成長が、読んでいてうれしくもあり、またトム同様にさみしくもあり。最後の、おばあさんとトムの間に流れる、年齢や時間を超えた友情にはじんわりしました。