「私の男」桜庭一樹

私の男

直木賞受賞作で、インモラルな父と娘の関係を描いた作品です（帯より）。アリかナシかで言うと、私としてはナシでした。構成はすごく良かったんですが…。感想はネタバレありなのでたたみます。
構成が変わっていて、娘が結婚する現在から始まり、数年おきにどんどん時代がさかのぼっていきます。なのでこの父娘がどうしてこんな関係になってしまったのか？そして２人にチラチラと見え隠れする謎は何なんだ？と、過去が知りたくて読み進めてしまいます。そして全部読み終わって過去や謎を知ってから読み直すと、最初に読んだ時に不思議だった描写が「ああ、なるほど！」と納得できます。なので正直あまり面白くなかったにも関わらず、２回目も読んでしまいました。これにはやられた〜という気持ち。
ただ、お話自体のディティールは荒いです。独身男性が養子を取れたり（日本では無理）、死体を押入れにしまっていたりとか。なので漫画的と言いますか、文学作品というよりレディースコミックという印象です。
インモラルがケシカラン、とかそういう事を言うつもりは毛頭なく、むしろ娘が父を愛するあまり深い関係に…というのであればロマンチックだわーなどと期待して読み進めていました。前述の通り時代がさかのぼっていく小説なので、娘が会社員の時にはすでにそういう関係で、じゃあ高校生の時…はすでにそう、えー中学生…じゃない…っていうか小学生かよ！そりゃないわー（落胆）。
いくら家族を亡くした孤独な少女だからって、性的虐待を受け入れるとは思えないので私としてはナシの方向で。娘は共依存なんだとか、そのグロテスクでショッキングなのがいいんだろう、とか頭では思うんですけどね。