「るきさん」高野文子

るきさん (ちくま文庫)

るきさん (ちくま文庫)

最初、ほんわかマンガなのかと思ったら違った。だってこのマンガの時代背景がバブルまっさかりなんだから。いくら主人公がほんわかさんでも、まわりからにじみでるバブルの匂い。それがこの本をただのほんわかマンガではなくしていて良い。


主人公の女性るきさんは、今で言うスローライフ…といってもコジャレとかほっこりとかエコとかロハスとかそういうんではなく、世の流れはどうでも良い超マイペースな生活を送っていて、その生活ぶりを描いたマンガ。1988年から1992年というバブルまっさかりに、またよりによってHanakoという若い女性の購買意欲をあおりまくっていた雑誌で連載されていたのに、こんなに流行を追わない、むしろ逆走している主人公というのがスゴイ。
るきさんの友達えっちゃんは、反対に世間のはやりすたりにあおられまくっている女性なのだが、物があっても満たされないので好感というか共感を持ってしまう。


るきさんとえっちゃんは30代女性、独身。今から約20年前は、今以上に独身女性への風当たりが強かっただろーが、2人はそれぞれ仕事を持っていて、1人暮らしで、好きなように暮らしている。私が感じ入ったのはこの独身女性の生活がリアル。休みの日は一緒に買い物に行って、カゼをひいたら看病し、サイズの合わない服はあげちゃう。で、そんな便利な友達がいると、恋人なんかいらないから、ますます縁遠くなっちゃったりするんだよね…。うるさい親もいないし、自分の趣味もあるから暇じゃないし、とにかく快適なのですよ。わかるなあ。快適な独身生活。このへんはHanako的といえるかもしれない。
でも友達が結婚しちゃうと、急に現実見させられたりするんだけどねアハハ(乾いた笑い)。


最後の終わり方もサラリとしていて、心地良いマンガ。
線が柔らかいのに、きちんと体などのラインがとれているタッチもあこがれる。このタッチは、きっと性格が柔らかいけど芯があるタイプの人じゃないと出ないんだろうな。なんて勝手に思ったり。